「今の仕事がしんどい」「今の仕事は合わないのかも」「HSPに向いている仕事って何だろう?」
そんな悩みを持つ方が多いかもしれません。
HSPは、職種そのものだけでなく、働く環境や条件によって向き・不向きが大きく変わります。
同じ仕事でも、職場の雰囲気や人間関係、働き方次第で大きな負担にも、安心して力を発揮できる場にもなります。
この記事では、HSPが「自分に合った仕事や環境」を考えるヒントとして、HSPさんに多く見られる才能、向いている/向いていない環境の具体例や、今の仕事のしんどさを分解する方法をまとめました。
ぜひ自分に合う働き方を探すきっかけにしてみてください。
HSPの特性と「環境を選ぶ大切さ」

HSP(Highly Sensitive Person)は「刺激に敏感な人」と言われていますが、その敏感さにはさまざまな特性があります。
ここではHSP特有の敏感さの仕組みと、「環境選び」が大切になる理由を説明していきます。
HSPの敏感さは、刺激を深く処理する脳の仕組みを持つためで、これは単なる「気にしすぎ」ではありません。
生物学的・神経科学的な研究でも示唆されている特性です。
※人間以外の動物にも、このような敏感さを持つ個体が同程度存在するそうです。
HSPの特性は、次の「DOES」という4つの要素でよく説明されます。
D:Depth of Processing(処理の深さ)
物事を深く考え、情報を丁寧に処理する傾向。
O:Overstimulation(過剰刺激になりやすい)
たくさんの情報を処理するために、すぐに疲れやすい。
E:Emotional Reactivity and Empathy(感情の反応の強さ、共感性)
自分の感情も他人の感情も強く感じ取りやすい。
S:Sensitivity to Subtle Stimuli(微細な刺激への感受性)
小さな変化や違い、空気の微妙な変化にも気づきやすい。
この特性は、人間関係や仕事の中で「相手の気持ちに気づける」「細やかに対応できる」といった強みになります。
でもその分、刺激が多すぎる環境では負担が大きくなりやすいことが、HSPさんの悩みになりやすいのも事実です。
この「環境の影響を強く受けやすい」という傾向のため、「悪い環境だとつらい、しんどい」という面がありますが、実はプラスの面もあります。
つまり、「良い環境では、非HSPの人よりも良い影響をたくさん受ける。そのため大きく力を発揮できる」というところです。(これについての研究報告もあります)
次の章では、このHSPが「環境の影響を受けやすい」面について、少し詳しく見ていきましょう。
HSPが仕事でしんどくなりやすい原因

前の章で触れたように、HSPの繊細さは大きな強みですが、同時に「環境の影響を強く受けやすい」面もあります。
ここでは、HSPさんが仕事の中でどんなときに特にしんどさを感じやすいのかを整理してみましょう。
- 刺激に敏感
オフィスの雑音、電話の音、複数の仕事を同時に振られてバタバタする…。
ちょっとした刺激でも敏感に感じて、神経をすり減らしてしまいます。 - 人間関係を深読みしすぎる
上司や同僚のちょっとした表情や言葉を気にしてしまう。
「怒ってるのかな」「迷惑じゃないかな」と相手の気持ちを想像しすぎて疲れてしまう。 - マルチタスクで消耗する
一度に複数の仕事を振られて次々に切り替えるのが負担になる。
一つ一つを丁寧に進めたいHSPさんには、頭を切り替え続けることが大きなストレスになりやすい。 - 相手の期待に応えようと頑張りすぎる
頼まれると断れない。
「期待に応えなきゃ」「迷惑をかけたくない」とキャパ以上の仕事を引き受けて、気づいたときにはヘトヘトに。 - 自分のキャパを超えても我慢してしまう
しんどいと感じても「みんな頑張ってるんだから」「甘えてはいけない」と自分を抑え続ける。
無理を続けるうちに心身が悲鳴をあげてしまうことも。 - 「弱い」と自分を責めがち
「どうしてこんなことで疲れるんだろう」「自分は弱いのかもしれない」と自己嫌悪に陥ってしまう。
「これ、私のことかも」と思う例はあったでしょうか。
これは、あなただけの問題ではなく、HSPさんにはとてもよくあることです。
働く環境はどんな人にとっても大事だと思いますが、HSPの場合は、環境の影響が特に大きいのです。
でも、こうした繊細さには強みにつながる面もあり、「弱さ」「ダメなところ」ではなく「特性」だということです。
ですから、HSPの方は「自分に合った環境を選ぶ」ことを前向きなこととして考えてください。
「逃げ」ではなく「選ぶ」という視点

職場に環境を変えてほしいと交渉したり、転職を考えたりするときに「わがままかも?」「逃げでは?」と感じる人もいるかもしれません。
これは、「迷惑をかけてはいけない」「逃げるのはよくない」という社会的な価値観が背景にあるためで、非HSPでもそう考える人は少なくありません。
ただ、HSPの人は特に、非HSPの人以上にものすごく我慢してしまう傾向があるようです。
人それぞれ、心地よく力を発揮できる環境は違います。
無理をしてすり減るのではなく、自分の特性を理解し、力を発揮できる環境を探す。
それは「逃げ」ではなく、自分を大事にして、自分を活かすための前向きな戦略だと考えてみてください。
仕事に活かせるHSPの特性

HSPの特性は、悩みにつながりやすいネガティブな面が注目されがちですが、実は強みになるポジティブな面もたくさんあります。
ここでは、HSPさんが持つそれぞれの特性が「どんな強みになるか」という視点でまとめました。
- 深く考える力
物事を丁寧に整理し、計画を立てるのが得意。
複雑な問題を落ち着いて考える力は大きな強みです。 - 創造する力
豊かな感受性や想像力を活かして、新しいアイデアを生み出す力。
アート、デザイン、文章など創造的な分野で輝きます。 - 人の気持ちを察する力
相手の表情や言葉の裏にある気持ちに気づける。
接客や対人援助、チーム内の調整役など、人と関わる仕事で役立ちます。 - 丁寧さ、正確さ
細かいところに気づき、きちんと仕上げようとする姿勢。
ミスを減らし、品質を保つ仕事で価値を発揮します。 - リスクを予見する力
「うまくいかないかもしれない」と先を読んで対策を考える。
計画立案や企画、品質管理などで失敗を防ぐ役割を担えます。 - 共感力
誰かの気持ちを想像し、寄り添う力。
福祉、医療、教育、カウンセリングなど人を支える仕事はもちろん、職場のチーム内でも安心感を生み出せます。
こうした特性は、自分では当たり前すぎて「強み」だと気づきにくいことも多いです。
でも周りから見れば、とても貴重で頼りになる力です。
ぜひ一度、自分の中にある得意なこと、当たり前にやっていることを見直してみてください。
仕事別|HSPに向いている/向いていない環境

ここでは、仕事別に「向いている/向いていない」という環境条件の例をまとめました。
あくまで目安ですが、参考にしながら「今の仕事がなぜしんどいのか」「自分に合う条件」を探すヒントにしてみてください。
仕事の特性別
HSPさんに向くと言われる仕事として、「人の気持ちに寄り添う」「正確さが求められる」「クリエイティブな表現」などがあげられています。
しかしこのような仕事の中でも、働く環境によって「合う場合」と「合わない場合」があります。
ここでは、それぞれの特性別に「向いている/向いていない」ポイントをまとめました。
※向いてる/向いてないの例は、個別の状況によっては当てはまらない場合もあると思います。
「+」を押すと開いて、向いているポイントや例、気をつけたいポイントを見ることができます。
気になるところだけ開いて、ぜひ参考にしてみてください。
人の気持ちに寄り添うのが得意なHSPですが、人と関わる仕事にも向いてる/向いてないがあります。
✅ 向いている
- 1対1でじっくり聴く
- 相談や必要な支援など深く理解する
- 相手との関係構築に時間をかけられる
- 感情の共有や共感を活かす
例: カウンセラー、個別指導講師、相談員、パーソナルトレーナー
✅ 向いていない
- 流れ作業で大勢をさばく
- クレーム対応が多い
- 速さ・数をこなすのが重視される
- 感情的な対立場面が多い
例: 大型店舗接客、カスタマーサポートセンター、混雑する飲食ホール
✅ 向いている
- 自分のペースで丁寧に確認できる
- ミスを減らす仕組みがある
- 静かな環境で集中できる
例: 校正者、研究補助、経理事務、データ入力(ルーチン)
✅ 向いていない
- 常に急かされる
- 中断が多い
- ノルマをこなす流れ作業
例: 工場の高速ライン作業、忙しい窓口業務、宅配仕分け(短時間で大量をさばく作業)
✅ 向いている
- 進め方を自分で決められる
- ひとつひとつを深く考える時間がある
- 個人で完結する部分が多いもの
例: デザイナー(フリーランス)、ライター、プログラマー、作家
✅ 向いていない
- 短納期大量案件を同時進行
- 突発修正が多い
- クライアントとの認識ズレを調整する必要性がしばしば発生する
例: 受託制作を行っている会社の量産案件、社内調整メインのディレクター
職種・業種別
続いて職種や業種です。
職種・業種ごとに「こうだと向いている」「こうだとしんどくなりやすい」という環境条件の例をまとめました。
※例は、個別の状況によっては当てはまらない場合もありますが、あくまで目安として参考にしてください。
「+」を押すと開いて、向いているポイントや例、気をつけたいポイントを見ることができます。
気になるところだけ開いて、ぜひ参考にしてみてください。
✅ 向いている
- 予約制や少人数対応の場合
- お客様の話をゆっくり聴ける職場
- チームで助け合う文化がある
例: 美容師(予約制サロン)、エステティシャン、カウンター接客(専門知識を活かす)、ホテルのコンシェルジュ
✅ 向いていない
- 大量の来客を高速でさばく必要がある職場
- 早さ優先で会話が型通りのもの
- クレーム対応が頻繁に発生する
- 騒音や強い照明など物理的な刺激がある
例: ファストフード、コンビニピーク帯、ショッピングモールのフロア接客
一般的にはHSPさんには向いていないと考えられますが、営業に興味がある方には、やり方やスタイルによって強みを活かせる場合もあります。実際HSP特有の直観力や創造力を活かして営業で活躍している方もいるとのことです。
✅ 向いている
- 既存顧客との関係構築がある
- コンサル型・課題解決型のもの
- 押し売りをしない方針の職場
- ヒアリング力を活かせるもの
例: ルート営業、BtoBの技術営業、保険のライフプラン提案
✅ 向いていない
- 新規飛び込み中心のもの
- 厳しい数字ノルマがある
- 断られる頻度が高く、切り替えが必須な仕事
- 同じセールストークの大量反復
例: 訪問販売、テレアポの新規開拓
一般的にはHSPさんには向いていると考えられる仕事ですが、職場の環境によって向いている/向いていない場合が考えられます。
✅ 向いている
- 相手にじっくり向き合うゆとりがある職場
- 信頼関係を大事にしている職場
- チームで相談・分担がされている
- 何かあった時の対応が仕組みで決まっているしっかりした職場
✅ 向いていない
- 人手不足で時間不足で忙しい職場
- 生徒や患者さんが多すぎて、個別に目が届かない状態
- 暴言・暴力対応が多い
- 相談できず孤立する
※ここではどの職種でも向いている場合、向いていない場合があると考えられます。
例:教師、塾講師、保育士、看護師、介護士、カウンセラー、ソーシャルワーカー、理学療法士、作業療法士など
✅ 向いている
- 一人でコツコツ進めるもの
- ルーチンワークがあるもの
- スケジュールを管理する業務
- 書類・データを管理する業務
例:経理、総務の文書管理、データ入力、社内システム運用
✅ 向いていない
- 突発対応が多い職場
- 電話・来客応対が頻繁
- 他部署との調整が多すぎる業務
- 優先順位が常に変わる職場
例:総合受付、営業事務(顧客対応中心)
✅ 向いている
- コーディングや設計などに集中できる
- オンライン業務が中心で刺激が少ない
- リモートワークが可能
- 問題解決を探求する業務
例:プログラマー、システム設計、データサイエンティスト
✅ 向いていない
- 頻繁な仕様変更に対応する必要がある
- タイトな納期への対応
- クライアントとの調整が多い
- 常時マルチタスクになる
例:受託開発や客先常駐での対応
✅ 向いている
- 特に正確さが求められるもの
- 一定リズムで同じ作業ができるもの
- チームの雰囲気が良い
- 刺激が少ないライン
例:精密部品の組み立て、検査工程
✅ 向いていない
- 大音量や強い照明の職場
- スピード重視のライン
- 危険作業(プレス機などの機械、高音・高所作業、化学薬品を使う、重い荷物を手で運ぶなど)
- 硬直した上下関係のある職場
例:食品加工の高速ライン、プレス工場
✅ 向いている
- ルーチンが決まっている
毎日同じ作業で先が見通せる
イレギュラー対応が少ない - 個人作業が多い
- 静かな環境
- ペース配分をある程度自分で決められる
休憩を自分で入れやすい
配達や作業の順番を工夫できる
例:ルート配送ドライバー(法人中心や置き配OKの場合)、郵便配達、倉庫内の個別ピッキングなど
✅ 向いていない
- 納期に追われる短納期対応が多い仕事
トラック積み下ろしで時間が厳しい
次々に急ぎ対応が発生する - チームで大声を出しながらの連携
倉庫の複数人ピッキング
荷下ろしのスピード勝負の作業 - クレーム対応や感情的なやり取りがある
ドライバーで再配達・遅延などトラブル発生
例:当日再配達の避けられない宅配便は要注意、繁忙期の倉庫ピッキング
※繁忙期の倉庫ピッキングは、短期間で大量出荷をこなすためスピードや体力勝負になることが多く、負担が大きくなりやすいので要注意です。一方で、医療品やBtoB向けの倉庫などは需要が安定していて、落ち着いて作業できる職場もあるようです。
✅ 向いている
- 安定した制度がある職場
- 仕組み化された業務
- チームで相談できる風土
- 予約制で余裕を持った住民対応できる場合
例:予約制の窓口対応、福祉課のケースワーカー(チーム対応)、事務や総務の書類管理、調査・企画業務、地域連携や相談業務など
✅ 向いていない
- 硬直した上下関係(年功序列やお役所的な文化が残っている場合)
- 配属ガチャ(希望しない部署への異動など)
- 突発的な住民対応
- 異動で全く別の仕事になる(一般企業よりそのケースが多い。システムから総務へ、など)
例:市役所の総合窓口、税務調査部門、クレーム対応窓口、繁忙期の住民票・手当申請対応、対立調整の多い部署など
※公務員や団体職員は、利益を追求する必要がない分、全体にピリピリした雰囲気が少なく、人間関係が穏やかな職場も多いです。
見通しを持ってコツコツ進める業務や、社会貢献を実感できる仕事も魅力です。
ただし、部署によってはクレーム対応や人事異動の多さなど、負担に感じやすい要素もあるので、自分に合った環境を選ぶことが大切です。
今の仕事の「どこがしんどい?」を分解してみる

今の仕事が「なんだかしんどい」と感じていても、実際には「どの部分が負担になっているのか」が自分ではつかめていないかもしれません。
そんな場合はまず、日々の仕事の中で自分が「どんな場面で特に疲れるのか」「何に敏感に反応しているのか」を具体的に言語化してみましょう。
たとえば、こんな視点で考えてみてはどうでしょう。
- 人間関係のストレスは?
上司や同僚との距離感、会話のちょっとした言い回しや表情の変化がストレスになる - 刺激の多さは?
オフィスの雑音、電話の音、周囲の話し声などがとても気になる - マルチタスクの負担は?
次々に仕事を切り替える必要がある、同時進行で進めることがしんどい。 - 物理的な刺激は?
音、光、人の多さ、においなど、感覚的な負担が大きくないか。
自分の「しんどい部分」を言葉にするのは意外と難しいかもしれません。
そこで、日々の仕事の中でどんな場面が負担になるかを整理するための質問をご紹介します。
- どんなときに特に疲れる?
- 逆に、どんなときに楽だった?
- 上司や同僚との距離感はどう感じる?(いい面、悪い面)
- 音や光、人の多さは気になりやすい?(いい面、悪い面)
「疲れるとき」だけでなく「楽だったとき」も一緒に考えてみると、負担を減らすヒントや、自分に合う環境がより見えやすくなります。
自分のしんどさを分解してみることで、漠然と「合わない」と思っていた原因が見えてきます。
しんどい原因がはっきりしたら、転職を考える前に、まず職場に交渉してそれを解消する方法がないか考えてみてください。たとえば下記のような相談ができないでしょうか。
- 上司に相談して業務量を調整する
- 部署や担当を変えてもらえないか考える
- 在宅勤務や時差出勤を試す
「職場に要求するなんて…」と思われるかもしれませんが、意外とそういう制度があったり、相談に乗ってもらえるケースもあります。
- 体調面を理由にして異動希望を出したら、希望が通った
- 診断書を出すことで、テレワーク日数制限を超えてフルリモートが認められた
- 隣の人の声が大きくて「いつもびっくりしてしまう」と伝えたら、あっさり「あ、ごめん、気をつけるね」と言われて声を抑えてもらえた
- 言いにくい相手のときは、目立たない耳栓を使って刺激を減らして改善した
- 上司に相談して業務量を調整してもらった
- クレーム対応を別の人と分担するようにした
しかし、その職場では改善が望めず、転職を考えた方がいいケースもあります。
- 相談や交渉をしても改善が望めない
- パワハラやいじめなど人間関係の問題が深刻
- ノルマや成果主義など企業風土が自分に合わない
- 刺激の多い環境がどうしても避けられない
- 心身の不調が続き、生活に支障が出ている
その場合は自分を守るため、そして自分の才能を発揮するために、転職を考える勇気を持ってみてください。
(何度も書いていますが、それは「逃げ」ではありません)
転職は大きな決断ですが、自分らしく働ける場所を探す大切なステップです。
なお、転職への具体的なステップについては、別の記事で詳しくご紹介する予定です。
まとめ
HSPにとっては、どんな職種を選ぶかだけでなく、どんな「環境条件」で働くかがとても大切です。
同じ仕事でも、職場の雰囲気や人間関係、業務の進め方によって向き・不向きが大きく変わります。
自分のしんどさを具体的に分解してみることで、今の仕事のどこが負担になっているのか、どんな環境なら働きやすいのかを考えやすくなります。
まずは職場内でできる小さな調整がないかを考えてみること、そしてそれが難しい場合は「転職」も視野に入れて自分の働き方を選んでいくことをおすすめします。
HSPは、自分が思っているよりもたくさんの可能性を持っています。
自分に合った環境と仕事を選び、才能を活かす方法を見つけるために、この記事が少しでも役に立てば幸いです。
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