「今の仕事は合っていないかもしれない」と感じつつも、「そんな都合のいい仕事なんてあるはずない」「どこも大変でみんな我慢してる」と思っていませんか?
HSPさんは特に、過去のつらい経験や周囲の声を真面目に受け止めすぎて、自分の選択肢を狭めてしまうことがあります。
今の仕事を続けることも、もちろん一つの選択肢です。
大事なのは「本当はどうしたいか」を自分で考え、選ぶこと。
ですからそのために、視野を広げて情報を集めてみるのも一つの方法です。
でも、「全部を一度に変えよう」とか、「完璧に自分に合った仕事をみつけよう」とか、あるいは「よし、転職活動を始めよう!」などと大きく動く必要はありません。
「どんな役割を果たしたいか」「どんな環境なら少し楽になれるか」を分解して考えることで、自分にも合った働き方を見つけるヒントが見えてきます。
「そんな仕事あるはずない」という思い込みを少しゆるめて、自分らしい仕事探しを考えるヒントを探すことから始めてみませんか。
この記事では、HSPさんにそんなきっかけになる情報をお届けします。
「そんな仕事あるはずない」と思うのはなぜ?

過去の経験が「探し方」を縛る
私たちは「仕事を探す」とき、どうしてもこれまで経験した職場や業界、職種の中、つまり自分の経験の中で自分ができることを考えがちです。
特にHSPさんは、一度しんどかった経験があると深く記憶してしまう傾向があり、「自分はこのくらいしかできない」「どこも同じかもしれない」と感じてしまうかもしれません。
でもそれでは「探し方」が狭まってしまいますね。
HSPはその敏感な特性から、仕事そのものと同じくらい働く環境の影響を受けてしまいます。
例えばこんな場合、大きなストレスになるかもしれません。
- いつも誰かが雑談していて、うるさい環境
- 曖昧な指示で、「とりあえず相談なしで進めていいよ」と言われる
※HSS型HSPは自由で楽に感じるかもしれないけど、多くのHSPは不安に感じるようです。 - みんなで仲良く、何でもシェアする文化
- 目まぐるしく小さなタスクが降ってきて、切り替えやマルチタスクが多い。
- ルールややり方がよく変わる
- 直接的な叱責はないけど、軽い皮肉や冗談でプレッシャーをかける
こうした環境は、一般的には「よくある」「そこまで厳しくない」と思われるかもしれません。
でもHSPさんにとっては、気を張り続けたり、相手の感情を過度に想像してしまったりして、エネルギーを消耗しやすいポイントです。

こういうと、HSPってめんどくさいな…と思われるかもしれませんが、「環境の影響を受けやすい」にはポジティブな面もあります。
HSPは「良い環境」では、非HSPよりも多くの良い影響を受けて力を発揮することができると言われています。
HSPにとって良い環境を選ぶのはとても大切なのです。
また、HSPは子どもの頃から「気にしすぎ」「考えすぎ」「とりあえずやってみなよ」などと言われて、
「私っておかしいのかも」「みんなと同じようにしなきゃ」と思ってしまいがちです。
そうした経験が、自分を過小評価する自己肯定感の低さにつながっているかもしれません。
そうすると、どうしても「自分にできる仕事」を狭く限定して考えてしまいやすいですよね。
でも、HSPの繊細さは、タフな非HSPの人とは違う形で優れた力を発揮できます。
ぜひ、「HSPには豊かな才能がある」ということを知って、「私にもできるかも?」という視点を持ってみてほしいです。
HSPの強みについては、下の記事でも書いています。
「みんな頑張ってるから自分も我慢」は本当?
「どこだって大変」「みんな我慢して働いている」という言葉を聞くと、「自分だけが弱いのかも」と感じてしまうかもしれません。
でも実際には、人によって「しんどさ」の種類も程度も違います。
あなたが我慢していることは、他の誰かにとっては特に我慢する必要のない、問題にならない場合もあります。
つまり、他の人はそこまで頑張っていないのに、「みんな頑張ってるから」と思い込んでしまっているのかもしれません。
何が気になるかは人それぞれです。
たとえば、あなたにとってはざわざわして落ち着かない環境が、むしろ「活気があっていい」と感じる人もいます。
いろんな人がひっきりなしに話しかけてくる職場も、気にならず、むしろ楽しいと感じる人もいます。
でも、そういう人たちは、あなたが得意な「深く丁寧に仕事をすること」や「相手の感情に寄り添って対応すること」は、苦手かもしれません。
「みんな同じ」という思い込みを一度疑ってみることが、自分に合う働き方を探す第一歩です。
「仕事の条件」だけじゃなく「役割」を考えてみる

自分に合った仕事を探すとき、これまでの経験だけにしばられると、新しい可能性を見つけにくくなります。
ここでは、仕事を探すときに別の視点を持つということについてみていきましょう。
何をしているときに「役立てた」と感じた?
私たちは仕事を選ぶとき、「給与」「通勤時間」「福利厚生」などの条件を重視しがちです。
もちろん、それも必要なポイントです。
でも、HSPさんの場合は特に、「自分がどんな役割を果たしたいか」を考えることもとてもおすすめです。
たとえば、過去に「ありがとう」と言われて嬉しかったことは何ですか?
自分が「役立てた」と感じたのはどんなときでしたか?
大きな成功じゃなくてもいいんです。
ちょっとした気配りや、話をじっくり聴くこと、ミスを減らす丁寧な作業だったかもしれません。
そうした役割を思い出すことで、自分がどんな貢献の仕方をしたいのか、ヒントが見えてきます。
「得意」とは言えなくても「好き」な役割
「得意なことが分からない」「自信を持てることがない」と感じるHSPさんも多いかもしれません。
でも、「得意」でなくても「好き」や「心地いい」と思える役割を探してみるのも大事です。
たとえば、
- 相手の話を聴いて、気持ちを深く理解する
- 細部まで気を配って、ミスを減らす
- 周りが気づかない小さな変化に先回りして対応する
- 誰かをサポートして安心させる
こうしたことは、目立たないかもしれませんが、大切な役割です。
「自分にとって心地いい貢献の形は何か」を見つけることが、自分に合う仕事を考えるヒントになります。
これまでの経験から、自分の好きやちょっと得意なことを探す方法は下の記事で紹介しています。
AIを使った自己理解を深める方法についても書いていて、おすすめです!
こちらもぜひ参考にしてください。
“今”大切なものから考える
もしかしたら、「本当にやりたいこと」「好きなこと」「得意なこと」はすぐには分からないかもしれません。
これは、経験を積み重ねながら少しずつ見えてくるものなので、時間をかけて少しずつ見えてくる場合もあります。
その場合は、「今の自分にとって大切なことは何か」を一度整理して、それを基準に仕事を探してみるのもおすすめです。
慎重なHSPさんだと「そんな探し方でいいの?」と不安に感じるかもしれませんが、「完璧に決めること」にこだわらず、負担を減らす視点で選ぶのは理にかなっていると思います。
私も以前転職したとき、はっきりした「やりたいこと」は分からなかったけれど、「好きなドラムやパーカッションを続けられる生活」を最優先にして探しました。
その結果、好きなことを続けつつ、新しい職場で「こういう仕事が得意だったんだ」と気づくこともできて、評価もしてもらえる結果になりました。
例えば、もし今「とにかく通勤がしんどい」と感じているなら、「楽に通えること」を第一条件にして、ほかの条件はシンプルに考えてみるのも手です。
そうやって自分にかかる負荷を少し減らすだけでも心に余裕ができ、次の方向性が見えてくることがあります。
選択肢を分解する:何を変えるか

今の仕事を続けるにしても、転職を検討するにしても、何を変えるのか?変えられるか?は自分で選択肢を選ぶときの大きなポイントになります。
「何を変えるか」ということを分解して考えてみると、今の仕事を続ける場合にどこを工夫できるか、また転職を検討する場合も「自分にできそうな小さな一歩」が見つかるかもしれません。
業界・職種を変える
思い切って業界や職種を変えるという選択肢です。
今の業界や職種が明らかに合わないと感じる場合は、特に考える価値があります。
HSPさんは「環境」や「仕事内容」の相性で疲れ方が大きく変わります。
別の分野なら、もっと楽に力を発揮できるかもしれません。
たとえば、BtoC※で常に不特定の人と接する仕事がつらかったなら、BtoB※や事務系の仕事を検討してみるなど。
「全く違う業界・職種は敷居が高い」と感じるかもしれませんが、「無理」と決めつけず、少し視野を広げてみることもヒントになります。
※BtoCは「Business to Consumer」で一般のお客様向けの仕事、BtoBは「Business to Business」で企業相手の仕事を指します。
同じ分野で環境を変える
今の仕事自体は好きだけど、「職場の雰囲気」「上司や同僚」「評価の仕組み」がしんどい。
そんなときは、同じ分野・職種でも環境を変えるだけで負担が大きく減ることがあります。
たとえば、
- 大企業→中小企業、逆もあり
- チームワーク重視→個人作業中心の職種
- スピード重視→品質重視の職場
- 対面中心→リモート中心
同じ仕事でも、会社や職場の文化によって全然違う働き方ができます。
働き方(時間・場所・契約形態)を変える
仕事内容は変えずに「働き方」だけを変えるのも選択肢です。
特にHSPさんは、通勤や勤務時間、人間関係の距離感など、働き方そのものから大きな影響を受けやすいです。
- フルタイム→時短、パート
- 会社員→業務委託やフリーランス
- 出社→リモートワーク
- 固定シフト→自由シフト
「仕事を続けるのがつらい」の背景に、「働き方が合っていない」ケースもたくさんあります。
「小さく変える」でも大きな変化になる
「転職した方がいいのかな?」と思っても、実際に踏み切るのはなかなか大変です。
そんな時は、ほんの小さく変える、小さく動くという選択肢もあります。
たとえば、
- 社内で部署異動を希望する
- 同じ部署の中で別チームに行く
- まずは社外の人に話を聞いてみる
- 求人情報を見てみる(恐る恐る見るだけでも、十分に大きな一歩です)
「今の場所から少し動いてみる」と、それが次の変化につながることもあります。
一気に転職活動を始めるのではなく、「どこを変えたら自分が楽になるか」を分解して考えることから始めてはどうでしょうか。
もしかしたら、次の一歩が見えてくるかもしれません。
「そんないい仕事あるはずない」は本当?

「自分に合う仕事なんて、そんな都合よくあるはずない」「どこも同じ、みんな我慢している」
そんなふうに思ってしまうことは多いかもしれません。
でもそれは本当でしょうか?
ここでは「自分にとってのいい仕事」を見つけるためのちょっとした方法をご紹介します。
視野を広げる
「少し視野を広げる」ことで、無理なく続けられる仕事が見つけられる可能性があります。
ここでは、そんな例をいくつかご紹介します。
(HSPの特性から、よくみられる類型的なパターンを挙げたものです)
✅例1(接客業の方の場合)
接客業で「毎日初対面の人と話し続けるのがつらい」と感じている人が、同じサービス業でも予約制のカウンセリングに移ると、顔なじみのお客様中心で負担が減る可能性があります。
「人と接することは好きだけど、初対面で気を遣いすぎるのはしんどい」など、自分の負担ポイントを分解し、もっと自分にあった別の形の接客をみつけることができるかもしれません。
✅ 例2(営業職の方の場合)
営業職で数字のノルマや飛び込み営業が苦痛な人が、同じ「営業」でも既存のお客様のフォロー中心のルート営業に変わると、「むしろ関係を深めるのが楽しい」と感じるようになるかもしれません。
同じ職種でも、働き方やターゲットによって負担は大きく変わります。
✅ 例3(HSPの特性を活かしたパターン)
HSPさんには「人の気持ちに敏感」な特性があります。
「細かいことを気にしすぎて向いてない」と思っていた人が、事務の中でもミス防止を徹底するチェック担当になると逆に向いていて、評価されるようになる可能性があります。
「気にしすぎる自分」が実は大切な強みとなる仕事があります。
こうして見ると、「全く別の仕事に変える」だけでなく、
- 同じ職種でも担当するお客様や業務内容を変える
- 自分の負担を分解して別の役割を探す
など、小さな変化で「自分に合った仕事」に変わる可能性もあります。
「そんないい仕事あるはずない」と決めつけずに、「どう変えたら自分にとって心地いいか」を考えてみてはどうでしょう。
情報収集を習慣にする
「そんな仕事あるはずない」と感じてしまう理由の一つに、「知らないものは、選べない」というシンプルな事実があります。
私たちは、どうしても自分がこれまで経験したこと、見聞きしたことの範囲で仕事を考えがちです。
でも、世の中には意外と知らない働き方や職種、会社の文化がたくさんあります。
情報を集めることは、「自分の選択肢を増やす」ために大切なステップです。
最初から「完璧な仕事」を探そうとしなくてもいいので、まずは「こういう働き方もあるんだ」「こういう会社もあるんだ」と知るところから始めてみてください。
たとえば、
- 求人情報を眺めてみる(応募しなくてもOK)
- 転職サイトや業界サイトの記事を読む
- 知人や先輩に話を聞いてみる
- SNSやブログで働き方の体験談を探す
「自分の知らない仕事の世界をのぞいてみる」ことで、少しずつ「こういうのならできそう」「こういうのは避けたい」というイメージがはっきりしてきます。

私も転職の時は、転職サイトをのぞくだけでも抵抗がありました。「厳しい現実」を見ることになるかも、と思ったからです。
実際、そういう面もありましたが、それにめげずに少しずつ求人情報をみて様子を探ったり、とりあえず自分の情報を登録したり、履歴書を作ってみたり、少しずつやっていきました。
転職には体力も時間も必要なので、ほんとにちょっとずつやって、出来そうな方向性を探るのがコツだと思います。
情報を集めることは、すぐに転職を決めるためではなく、「自分がどんな働き方をしたいのか」を知るヒントにもなります。
ぜひ、気軽に「情報収集」を始めてみてください。
「これならできそう」の小さなヒントを集める
情報を集めていくと、「これならできそう」「これは無理そう」という感覚が少しずつ見えてきます。
でもHSPさんは、完璧に条件をそろえないと動けない、失敗したくない、という気持ちが強い方も多いと思います。
そんなときは、「大きな決断を一度にする」のではなく、
「これなら少し試せそう」「これなら負担が少なそう」という小さなヒントを集める意識を持ってみてはどうでしょう。
たとえば、
- 通勤が負担なら「近くの仕事を探す」
- 人間関係がつらいなら「少人数の職場」「リモート中心」
- ルールがあいまいで疲れるなら「マニュアルがしっかりしている仕事」
- 逆に自由度が高い方が楽な人は「裁量の大きい仕事」
「向いている仕事=完璧な条件を満たす仕事」ではなく、
「自分のしんどさを減らせるポイントを押さえた仕事」と考えると、選択肢はぐっと広がります。
また、実際に求人情報を見たり、働いている人の話を聞く中で、
「こういうところなら無理なくやれそう」「これは苦手だな」という感覚を集めてメモしておくのもおすすめです。
そうすることで、「自分が大切にしたいポイント」がだんだんはっきりしてきます。
仕事選びは、最初から完璧な答えを出さなくても大丈夫です。
「できそうなところから少しずつ探す」という姿勢を持つことが、HSPさんにとってはとても大切なアプローチです。
まとめ
「そんないい仕事あるはずない」「みんな同じように我慢している」
そう思ってしまうのは、これまでの経験や周りからの言葉がそう感じさせるからかもしれません。
でも、実際には「仕事」そのものだけでなく、
- どんな役割を果たしたいか
- どんな環境が合うか
- どこを変えれば負担が減るか
を考えることで、選択肢が見えてきます。
転職や仕事選びは確かに大きな決断になると思いますが、全部を一気に進める必要はありません。
「今より少し楽になるところはどこか」を探して、小さく動いてみることも立派な一歩です。
どうか「そんな仕事あるはずない」とあきらめずに、「私に合う働き方があるかもしれない」と思ってみてください。今の仕事を続けるか、新しい一歩を踏み出すか——どちらを選ぶかは、あなた自身が決めていいのです。
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