HSS型HSP・HSPはなぜ遅咲き?|やりたいことが見つからない理由を心理学の発達段階から探る

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HSP・HSS型HSP

HSS型HSPの人は遅咲き、という説を時々見かけます。
本当でしょうか?

実は、HSS型HSPが遅咲きということについては、HSS型HSP研究の第一人者トレーシー・クーパー博士の著書でも触れられています。

HSPの特性を持つ人が生きずらさを感じることは多く、それはまず、非HSPが大多数の社会で、HSPの特性を持って生きるのが大変だということがあります。
でも、もしかしたらHSP・HSS型HSPが遅咲きだということも、生きづらさの原因になっているかもしれません。

この記事では、HSS型HSPがなぜ遅咲きになるのかを、自分自身もHSS型HSPの私が発達心理学の理論と比較して考察し、また花開くためのヒントをわかりやすくまとめました。
なぜそうなるかを知ることで、気持ちが楽になるヒントにつながるかもしれません。
生きづらさなどで悩んでいる、HSP、HSS型HSPの方の参考にしていただけると嬉しいです。

HSP・HSS型HSPとは?

HSPとは、「Highly Sensitive Person(とても敏感な人)」の略で、音や光、人の気持ち、周囲の雰囲気など、さまざまな刺激に敏感で、深く感じ取りやすい気質の人を指します。

一方、HSS型HSPとは、このHSPの気質に加えて、「HSS(High Sensation Seeking/刺激追求型)」という、冒険心や好奇心が強く、新しい体験を求める気質もあわせ持つタイプのことです。

HSPの人は、まわりの環境や人の感情に敏感に反応しやすく、日常の中でも疲れやすさや生きづらさを感じることがよくあります。
また、他の人に気をつかいすぎて自分を後回しにしがちで、「自分はどう生きたいのか」と迷いやすいのも特徴のひとつです。

一方、相反する2つの特性を持つHSS型HSPは、「傷つきやすいのに刺激を求めてしまう」という矛盾を抱えています。
このふたつの気質が内側でぶつかり合うことで、自ら刺激を求めに行って傷ついたり、自分の本当の望みがわからなくなったりしやすいです。
そのため、「生きづらい」「やりたいことがわからない」「仕事が続かない」といった葛藤を抱えることも少なくありません。

※HSS型HSPやHSPは病気や診断名ではなく、生まれ持った気質のひとつです。
HSS型HSPの特徴については、以下の記事で詳しくまとめています。気になる方はぜひご覧ください。

HSP・HSS型HSPはなぜ遅咲き?クーパー博士の見解を紹介

HSS型HSP研究の第一人者であるトレイシー・クーパー博士は、著書の中で次のように述べています。
(博士自身も、自分は「遅咲き」タイプだと語っています)

HSPは非HSPとは違い、人生半ばにさしかかるまで自分自身を十分に理解できず、非HSPがもっと早くに達成することも達成できないと言われています。
(トレイシー・クーパー著「傷つきやすいのに刺激を求める人たち」より)

ここでは「HSS型HSP」ではなく「HSP」と書かれており、遅咲きなのはHSP全体に当てはまる傾向と読み取れます。

もし、HSP(HSS型を含む)の人たちが自分自身を理解するのに時間がかかるのだとしたら、大人になって就職する時期になっても、「自分のことがよくわからない」「やりたいことが見つからない」と感じるのは、もしかしたら当然のことなのかもしれません。

社会の仕組みは、大多数の非HSPの人に合わせて作られています。
ですので、非HSPの人に比べて達成のタイミングがずれるということは、時として「生きづらさ」の原因になる、ということもこともありえます。

ここからは、HSP(HSS型を含む)が「遅咲き」になりやすい理由について、一般的な発達段階と比べながら考察していきます。

▶下記がトレイシー・クーパー博士の著書です。

HSS型HSP・HSPが遅咲きになる本当の理由とは?

一般的な発達段階|エリクソンの理論から見る成長のステップ

まず、一般的な発達段階を見ていきましょう。
人の発達段階を説明する理論として、広く知られているのが、心理学者エリク・エリクソンによる「心理社会的発達理論」です。
エリクソンは、人の人生を8つの時期に分けて、それぞれの時期に「心の成長に大切な課題」があると考えました。そして、その課題をうまく乗りこえていくことで、「自分はこういう人間だ」という”アイデンティティ”を育てて成長していくとしています。

では、心の成長にはどんなステップがあるのしょうか?
下の表では、エリクソンの発達段階における8つの段階とその課題をまとめました。

段階年齢の目安課題 vs 危機発達課題の内容
乳児期0〜1歳半ごろ信頼 vs 不信人や世界を「安心できる」と感じられるか
幼児期前期1歳半〜3歳ごろ自律性 vs 恥・疑惑自分でやってみようとする力を育てる
幼児期後期3〜6歳ごろ自発性 vs 罪悪感自分から行動し、目的をもって動けるか
学童期6〜13歳ごろ勤勉性 vs 劣等感できることを増やし、自信をもてるか
青年期13〜22歳ごろ同一性 vs 同一性の拡散自分は何者か、
どんな人生を生きるかを考える
成人期22〜40歳ごろ親密性 vs 孤独深いつながりや信頼関係を築けるか
壮年期40〜65歳ごろ生産性 vs 停滞社会や次の世代に貢献できるか
老年期65歳〜統合 vs 絶望自分の人生をふり返って納得できるか

たとえば、乳児期には「まわりの人は自分を大切にしてくれる」「世界は安心できる場所だ」と感じられるかどうかが大切で、これがうまくいくと「信頼感」が育ちます。
失敗すると世界に対し不信感を抱きます。
また、1歳半ごろになると、自分でいろいろやってみようとする「自律性」を育てることが課題になります。うまく達成すると「自律性」が育ちますが、もし、自分でやろうとしたときに怒られたり管理されたりすると「恥・疑惑」を持つこともあります。

こうして、学童期の終わり(13歳ごろ)までにそれぞれの発達課題に向き合いながら成長していきます。
「青年期」(中学生くらいから)になると、とても大きな課題に直面します。

それは、「自分ってどんな人間なんだろう?」「自分はどんな生き方をしたいんだろう?」という問いに向き合い、自分らしさ――「自我同一性=アイデンティティ(自分は誰かという感覚)」を確立していくことです。

この時期は「モラトリアム(猶予)期間」とも呼ばれ、まだ社会的な責任を持たず、自分の中でさまざまな可能性を試しながら過ごすことになります。
それまでは、親や先生の言うことが絶対だと信じていたのに、「自分はそう思わない」「違うのではないか」という反発心を持って葛藤することもあります。
進路や人間関係に悩む、いわゆる「思春期」がこれにあたります。

多くの人は、このモラトリアムを20代前半までにある程度終えて、自分なりの方向性を見つけ、社会に出て働き始めます。そして、次の「成人期」以降の課題と向き合っていくわけです。

もしアイデンティティの獲得に失敗すると、「自分はどういった人間か」という認識がはっきりしないまま、次の段階へ進んでいくことになります。

ここではエリクソンの「心理社会的発達理論」を簡単に説明しました。より詳しく知りたい方は、ネット上に解説されているHPがたくさんありますが、下記のサイトなどわかりやすいと思います。

HSP・HSS型HSPの「遅咲き」を発達段階から読み解く

モラトリアム期が遅れる?HSP・HSS型HSPが抱える発達のギャップ

ここからは、クーパー博士の書かれた、「HSPは非HSPがもっと早くに達成することも達成できない」
という言葉から、これがどういうことかを考察していきます。

一番大きな要因として、私たちHSP(HSS型を含む)は、青年期の「モラトリアム期」が、通常より遅れるのではないか、ということが考えられます。

22歳ごろまでの青年期にアイデンティティが確率していないと、アイデンティティ(自分がどういう人間か)がはっきりしないまま、次の課題と向き合っていかないといけなくなります。

例えば、恋人ができたり結婚したりしてパートナーと親密な関係を築いていく。
子供を育てる。
また、就職して社会に貢献して後輩を育てるなど。

これを、アイデンティティがはっきりしないまま取り組むということになります。
そうだとすると、20代以降、「自分が何をやりたいのかよくわからないな…」「なんだか生きづらい」と感じるようになるのも当然ではないでしょうか?

モラトリアムがなかった私の経験|HSS型HSPとしての気づき

実は私自身、心理学でエリクソンの発達段階を学んだときに、「私ってモラトリアムなかったな」と思いました。

ネットでHSS型HSPの方が書かれた記事で、やはり「モラトリアムがなかった」という方がいらっしゃいました。
そういう方は多いかもしれません。

HSS型HSPにとってのモラトリアム期はいつ来る?体験と考察

では、青年期に来なかったモラトリアムはいつくるのでしょう?
これも、自分の体験や様々な情報から考察してみました。

私は、30代半ばから「自分がほんとうにやりたいことはなんだろう?」と悩み始めました。
今思えば、これは青年期の課題そのもの💦
あれがモラトリアム期だったのか!と思ってます。

また、一般的にもHSP・HSS型HSPの方には、社会に出た年代から、仕事や人間関係、生き方に悩む方が多いように見受けられます。
お一人ずつの状況はわかりませんが、「自分はどんな人間か」「何をやりたいのか」という課題に取り組んでいる方も多いのかもしれません。

そして、アイデンティティ確立がいつになるかですが、私は50歳になったころ、なんとなく見え始めてきたかも…?くらいでした。

クーパー博士の著書では、中年期から大学に戻りたいという相談がある話など出ているので、やっぱりその頃かもしませんね。

つまり、中年期以降ようやく自分のことがわかってきて花開く、ということかもしれません。

本音を抑えて生きてきたことが、遅咲きの理由

HSP、HSS型HSPがこのように遅咲きになる原因ですが、勘のいい方はすでにお察しかと思いますが…。

HSP、HSS型HSPは、子供の頃から自分の繊細さや刺激追求性(HSS型の場合)を見せないようにしたり、感覚そのものを抑えたりすることが多いですね。
また、まわりに合わせすぎて、自分が本当はどう感じているかがわからなくなることもよくあると思います。

社会に合わせるために多くの努力を重ねる中で、本来の自分を否定したり、抑え込んだりしてきた結果、
思春期になっても「でも、自分はそうは思わない」という内側の葛藤が十分に起きず、
「本当の自分はこうなんだ」とはっきり言えない――
そうした背景が、アイデンティティの確立を遅らせている要因のひとつと考えられます。

遅咲きでも大丈夫|HSP・HSS型HSPが自分を受け入れるヒント

私はずっと、自分はなんでやりたいことがわからないんだろう。なんで自分のことがよくわからないんだろう、と思って生きてきました。
でもそれが遅咲きのせいだとしたら?
そして遅咲きになるのは自然なことだとしたらどうでしょう。

人生の後半で見つける“本当の自分”|HSP・HSS型HSPの可能性

HSPやHSS型HSPにとって、「遅咲き」はごく自然なこと――そう考えると、少し気持ちが楽になりませんか。

一般的な発達モデルでも、思春期には葛藤が生じ、強い悩みを抱える人も多いとされています。

それをHSP・HSS型HSPの人は、大人になってから、社会人としての責任を担いながら取り組んでいるのですから、大変ですよね。
でも、それが“本来のペース”だとしたら、焦る必要はないのかもしれません。
(私自身も、「仕方なかったんだな…」と感じました)

人生の後半になって、自分のことがようやくわかってきたり、やりたいことが見えてきたりする。
勉強したいテーマが見つかって大学に戻る人や、転職・起業に踏み出す人もいます。

ゆっくり時間をかけて、自分らしい生き方が見えてくるのも、悪くないと思います。

HSP・HSS型HSPの特性を否定しない|自分らしさを取り戻す視点

HSPやHSS型HSPとして、自分らしく生きていくためには、これまで否定したり抑え込んできた特性を、受け入れていくことが大切です。
私自身もまだまだですが、周りに合わせて気づかないふりをしていた部分を少しずつ認めて、逆にその特性を発揮していくことが必要だと思います。

そのためには、まずは、日常で感じるちょっとした違和感や、「本当はこうしたい」という気持ちに目を向けてみることから始めてみてはどうでしょうか。
例えば次のようなこと…

  • 「こうすべきだから」と思ってやっていることをやめてみる
    やめるのには意外と勇気がいりますが、それが社会の常識に従っているだけなら考え直してみては?
  • なんとなく体調がすぐれないときは、どこかで無理をしていないか振り返ってみる
  • 「いやだな」と感じた気持ちを無視しないで、何かできないか考える
    …我慢せず、言葉にしたり、避ける工夫をする。
  • やりたいことは、小さく始めてみる
    本格的にやることを目指さず、実験感覚で「ちょっと試してみる」と無理なくどんな感じかつかめる

日頃感じていることを、少しずつ拾い上げていく――
それを繰り返していくことで、子供の頃に抑えていた繊細さや刺激への好奇心が自分らしさとしてあらわれてきます。

もし、詳しく知りたい場合は、下記の本が参考になると思います。HSP向けの本ですがHSS型の方にもおすすめ。

HSS型HSPの方には、下記の本もおすすめです。HSS型HSPの才能と「やりたいことの見つけ方」がその人のフェーズごとに解説されています。自分に当てはまるフェーズが2つ3つ見つかるかも。

まとめ

HSPやHSS型HSPの人にとって、「遅咲き」は決して特別なことではなく、ごく自然なプロセスと考えられます。

人よりも敏感で、人よりも多くのことを感じ取ってしまうHSP。
また繊細さと同時に、内なる刺激や外の世界への好奇心を持ち続けているHSS型HSP。

たとえ今、「自分のやりたいことがわからない」「生きずらい」と感じていたとしても、それはきっとこれから花開こうとしている途中なのだと思います。

この記事が、そんなHSP、HSS型HSPの方の参考になれば幸いです。

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